世界農業遺産及び日本農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ(※1)及びシースケープ(※2)、農業生物多様性(※3)などが相互に関連して一体となった、将来に受け継がれるべき重要な農林水産業システムを認定する制度です。
峡東地域では、狭い農地で安定した果実生産を行うための多くの技術が開発されてきました。
中でもブドウの甲州式棚と疎植・大木仕立てを組み合わせた栽培方法は、日本の多雨・湿潤でブドウ栽培に不利な気候の中で、安定したブドウ生産を行うため開発され日本独自の独創的な適応技術であり、現在は日本のブドウ栽培の基本技術なっています。
また、生食用を中心に、日本人の味覚の繊細さと果実に大きさや外観
の美しさを求める独特の価値観を背景に、芸術品とも評される果実を生産するきめ細かい手作業、ブドウの場合は、整枝・剪定、摘房・房づくり、摘粒、傘かけ、収穫などの作業による高度な栽培技術が発達しました。
峡東地域では過去に度々土砂災害や洪水被害に見舞われ、特に明治期(1868〜1912)年 には水害が多発しました。
1911年に明治天皇より県下全ての入会御料地が県有財産として(「恩賜林」と呼ばれている)御下賜されて以降は、それぞれの地域ごとに、条例に基づき地域住民が保護団体を形成して保護活動を行っています。峡東地域においても森林の保護活動が行われ、扇状地の上で地域住民が現在でも安定的な生活を営める基礎となっています。
峡東地域の特徴でもある扇状地は、その地形・地質から水の確保が難しく、古くは数百年前に開削された堰(せぎ)と言われる大小300以上の水路により、農業用水や生活用水を確保してきました。
この堰を維持・管理するための組織活動は現在にも受け継がれ、その活動と地域における人と人との繋がりが 、これまで幾多の災害等を乗り越え、果樹農業システムを維持してきました。
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